牧伸二さん「自殺の深層」 演芸協会の“金銭問題”抱えていた

 4月29日未明、東京都大田区の多摩川に架かる橋から転落し、死亡したウクレレ漫談家の牧伸二(まき・しんじ、本名大井守常=おおい・もりつね)さん(享年78)。警視庁田園調布署は自殺とみている。牧さんが活動拠点としていた東京・浅草の演芸関係者から、「自殺とは思えない」と声があがる一方、悩みを抱えていたという見方も浮上している。

(以下引用)
 「あーあ、やんなっちゃった」と歌う明るい社会風刺で一世を風靡した牧さん。同署によると、29日午前0時15分ごろ、牧さんとみられる男性が川に飛び降りるのを見た通行人が交番に届けた。現場近くに牧さんの自宅があり、遺書は見つかっていない。

 牧さんは28日午後1時半から、自身が会長を務める東京演芸協会主催による「お笑い演芸会」(お江戸日本橋亭)に出演。15分くらいの舞台の後、東京・浅草の「東洋館」に向かった。

 「楽屋入りした後、1人で行きつけの喫茶店へ向かった。トリの出演なのに戻ってこないためスタッフら探しに行ったが、姿はなかった」(劇場関係者)。公演後に行われた同協会の理事会も欠席した。

 この理事会では、数百万円に及ぶ協会の使途不明金について話し合われる予定で、牧さんは会長として、若手から事態を説明してほしいと要望を受けていたという。

 東京の演芸界の重鎮として長い間、第一線に立ち続けた牧さん。2002年に脳出血で倒れたが、リハビリを経て活動を再開した。歩くには杖が必要だったが、最近は別の病気に悩んでいたようだと浅草の演芸関係者が明かす。「数年前から、年齢からくる認知症気味で、2年前には自宅でボヤを起こした。最近も『東京駅で迷ってしまったり、コーヒーに砂糖を入れたつもりで飲んでみると甘くなくて、テーブルの灰皿に砂糖の山ができていたり。記憶が鈍ってきたよ』と語っていた」

 そして「フラフラと歩いているうち、誤って橋の欄干を何かと勘違いして越そうとして転落したのではないか。足が不自由なので、欄干を乗り越えての自殺を考えるとは思えない」と話すのだ。

演芸評論家の高山和久氏は、「牧さんは生涯現役を自認していて、急に自殺するとは思えない。ただ、ナイーブな人だから、喫茶店で休んでいるうちに仕事のことを忘れて舞台に穴をあけてしまったことを苦にしてしまったのかも…」と話す。

 東京演芸協会の理事で長年、牧さんと親交がある漫画漫談のマンガ太郎は、「面倒見がよくてやさしい人だった。『昭和九年会』では玉置宏さんと仲が良かった。会長のウクレレ漫談が見られなくなるのはとても残念」と話す一方、「後遺症の他に、何か別に抱えている問題があったという話も聞いている。本当に人生が嫌になっちゃったのかな」と複雑な思いを明かす。同じく理事でギター漫談のあさひのぼるは「温厚で偉ぶる人じゃなかった。おととし『第1回東京演芸協会会長賞』をいただき、その時の優しい労いの言葉は忘れません」と肩を落した。

 東京の演芸人、喜劇人が落胆した牧さんの死。葬儀・告別式は近親者のみで行われ、喪主は妻、良子(よしこ)さん。後日、しのぶ会が開かれる。
(引用元:zakzak)